バルセロナに住む学生時代の友人Tの家を訪ねることを決めたのは、春のこと。
Tが日本人とスペイン人のハーフである旦那さんと、スペインはバルセロナに住むようになって早4年。
ずっと、Tが暮らすバルセロナをこの目で見て感じたいと思っていた。
そしてやっと、このタイミングで、忙しいTの都合と私の休みが上手く重なった。
この機会を絶対に逃すものかと、夏に必ず実行できるよう、私にしては珍しく早い段階から最優先でスケジュールを組んでいった。
私の今年の一大イベント。
今年の夏は楽しむぞ!!
そして8月。
ついに実現する日がやってきた。
「久々に両親に顔を見せようと思って。」と私が出発する日に一緒にスペインに発てるように、日本に帰国していてくれたTと一緒に一路スペインへ。
Tとは1年ぶり。
1年も間があけば話題はてんこ盛り。
久しぶりの会話に笑いが絶えることなく、2人で喋り続ける。
そんなたわいない会話の端々から、Tは日本の政治、流行、映画、ドラマに至るまで、私よりずっと詳しく知っていることがわかった。以前の彼女は、日本にいた時も常に海外に目を向けていたし、アメリカに留学していた時も、オーストラリアで働いていた時も、その国にどっぷり浸っていて、日本にあまり興味はない様子だった。
そんなTの変化は私にとってとても新鮮。
そんな感想を正直に彼女に伝えると、
「そうだね。私は、いろんな国を旅したり、何年か住んでみたりということを繰り返してきたでしょ。
これまでは、いつか日本に帰る、帰れるっていう気持ちが、私の中のどこかにあった。
だけどね、この何年間か実際スペインで暮らしてきて、スペインで暮らすことが旦那にとって
1番幸せだということが良くわかって、スペインにきっと永住することになるってことをなんとなく
感じてるし、そうなるんだってことをあえて自分に言い聞かせててさ。
そうなるとね、不思議と日本のことがすごく知りたくなるんだよね。」
と言った。
「それってさ、スペイン人として生きていこうってこと?」
と聞いたら、
「やめてよー。私は、ずっと日本人だよ。スペイン人として生きたいと思っても
生きられないし、私は日本人としてこれからも生きていきたいの。
日本から遠く離れて、そこで生きていくことを決めて、初めて日本人でよかったって
思えたんだ。」
と言っていた。
それから、昼の3時に強盗に襲われた話もしてくれた。
大通りから一本入った道を歩いていたら、後ろからいきなり羽交い絞めにされて首を絞められたとのこと。
バックを狙っていることがわかったから、バックを放り投げて何とか難を逃れたらしい。
午後3時に道路で首を絞められる-日本では考えられないできごと。
日本人として生きていくこと決めても、日本人のまま生きていくにはかなり厳しい状況が日常に溢れる環境。
そこで生きていくことを決めたTは今まで以上に強く逞しく、そしてやわらかくなっていた。
この旅でTと一緒に過ごす時間は、これまでの私の旅にはなかった角度で、いろいろなものを私に見せ、感じるさせてくれることになる。